結果、わが国の沿岸域には多種多様なうえに高度な都市的機能および産業活動が集積していることから、流出油に対する沿岸域の脆弱性を考えるに当たっては、自然環境面に加えて社会・経済活動面に対しても十分でさらに慎重な配慮を行う必要があることが明らかになった。
すなわち、センシティビティ・マップをわが国の実情に即した形でわが国へ取り入れていくためには、汀線の市民利用および汀線背後の土地利用などを新たなセンシティビティ指標として取り上げ重視する必要があるとともに、わが国における後背地、汀線および海面利用の密集性を勘案するに、油汚染によって被害を受ける恐れのある対象事物のプロフィルなど、より詳細な情報の提供が必要であることが明らかとなった。
従って、わが国のセンシティビティ・マップは、米国のESマップを参考としながらも、より多彩なセンシティビティ指標およびそれらの指標のプロフィルなど、より詳細な情報を提供できる構造を有するものが望ましい。

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=平成7年度=
当協会は、平成五年度にセンシティビティ・マップに関する基礎調査を実施し、わが国の実情に即した形で早急に整備・普及事業を進めていく必要がある旨の提言を行うとともに、作成方法に関するガイドラインを策定した。
平成七年度は、五年度の調査結果に基づき、東京湾を例に沿岸域の自然環境および社会的・経済的利用状況などに関する情報を収集した上で「東京湾沿岸域環境保全リスク情報マップ」を試作した。さらに作成したマップに改良を加えるなどの目的により、マップに対する防災関係者をはじめとする関係利用者の意見を聴くため「沿岸域環境保全リスク情報マップワークショップ」を開き、なお一層有効な整備・普及方法のあり方に関する検討を行った。
またセンシティビティ・マップの先進国である米国に調査員を派遣し、同マップの整備・普及に関する現地調査を実施した。さらに基礎調査において、一部有職者から指摘があったセンシティビティ・マップのコンピューター化に関する検討についても、米国における現地調査結果などを基にして行った。
五、事業の成果
本事業では、平成五年度に実施した基礎調査を基に、わが国の実情に即した形でのセンシティビティ・マップである「沿岸域環境保全リスク情報マップ」を東京湾を例に試作した。
一九九五年(平成七年)五月の0PRC条約の発効に伴い、センシティビティ・マップの整備・普及が進められている中、わが国初のセンシティビティ・マップ試作事業である本事業は、まさに時宜を得た世論を反映したものであった。
また阪神・淡路大震災の発生により、防災問題に対する関心が一層高まる中「沿岸域環境保全リスク情報マップワークショップ」には、多数の防災関係者が集まり、幅広い意見の交換が行われた。
今後は、ワークショップで得た意見などを本事業に反映させ、より有効なセンシティビティ・マップの整備・普及方法のあり方を探ることなどにより、わが国におけるセンシティビティ・マップの整備・普及の方策に積極的に貢献できるものと大いに期待できる。
六、おわりに
現在、当協会は、伊勢湾沿岸域を対象とした環境保全リスク情報マップの試作事業を進めている。
今回試作した情報マップは、いわゆる紙マップであって、容量的にも機能的にも限界があることは

 

 

 

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